初期の認知症対応(母の場合)
母は認知症になった
82歳の母は、認知症気味です。
本人は最初、「80歳を超えたおばあちゃんよ? 物忘れがあっても普通なのよ」と認知症を認めませんでした。
「私に全て覚えていてっていうの? 私は物忘れをしては許されないの?」
検査を受けようと言った私にすごい剣幕で怒りました。もうそれ以上何も言えなかった私です。
初期の頃から2年たち、ようやく現在「ちょっと普通じゃ無い」そう母も思い始めたのです。
それまでにどれだけの親子間トラブルがあったか。
「認知症と認めてもらい、病院へ連れて行きたい私」
「絶対に認知症だと認めない親。激怒する親」
大変でした。
認知症ということばは、かなりの「絶望感」があるようです。
考えてみると…。
認知症の人をテレビや雑誌でみると、かなり症状の進んだかただと思いませんか?
メディアも「いかにも認知症」な人を登場させたほうがインパクトもあるし、視聴者も納得しやすい。
だから言ってみれば「あんなふうになったら終わりだ」とまで思わせるような「認知症になってしまったらこうなる」というイメージが出来てしまっているうような気がするのです。
母は、「健忘症ぎみだわ」とはすぐ認めました。
健忘症になるのは、「年だし仕方ないわね」と、比較的単純に受け入れやすいみたいです。
でも、「認知症」だとは未だに認めてくれていません。
認知症は本当にやっかい
認知症は本当にやっかいです。
「あれ? 親がちょっとおかしい?」と思っても「まぁ年だしな」で済まされてしまうことも少なくない。
遠距離介護をされているかただと、コミュニケーションを取る少ないのでなかなか気づけないことも。
また、子ども以外の第三者といるときは意外としっかり受け答えしたりするのです。
※ま、(私を含め)おばちゃん同士の会話って端から聞いていると「受け答えがかみ合っておらず、言いたいことだけばーっと言う」なんて事が往々にしてありますからねぇ。
対して、家では、「これがない、あれがない」「の連発。「忘れた」の連発。
でも、しっかりした母しか知らない第三者には「何言ってるのー、お母さんしっかりしてるわよー」などと(無責任に)言われ、それを聞いた母も「それみたことか」と鼻高々。余計に事態がややこしくなることも。
どうか、このサイトにあるiPad miniなどのコミュニケーショングッズなどを使って、介護する側に無理なく、親御さんと頻繁に連絡を取ってあげてください。
多くの場合の「あれ? 親がちょっとおかしい?」は、当たっている…そんな気がしてなりません。
でもね。
私は、母と数年間向き合って、過去を振り返ってきたときに、「いや、それは違うな」なんて思ったりするのです。
ここからは持論なのでご容赦ください…。
そう。
母は、認知症とは認めていません。
でも健忘症だとは認めています。
実は、私は母に「あなたはものすごく物忘れが酷い」ということを客観的にそのつど指摘してきたのです。
「それはさっき何回も言ったよ?」「忘れてるよ?」「それは○○でしょう? 自分で言っていたよ?」「その話は今日は○回聞いた」
その都度、「あなたは忘れっぽい」「これだけ忘れている」「そう、あなためっちゃやばいよ」ということを指摘しました。
そのおかげで母は「自分は忘れっぽい」ということを認識してくれていると思うのです。
もしも私が(まるで腫れ物に触れるように)、母が酷い物忘れをしていても何の指摘もせず、「うんうん、そうねー」と聞いていたら?
母は、いつまでたっても「私は物忘れが酷い」ということを認識してくれていなかったかもしれない…。
だって、物忘れが酷すぎて「忘れた」ということを他人から指摘されるまで「忘れた」ことを「忘れてしまう」のですから…。
認知症を介護する。
これは、本人がまず「自分は健忘が酷い」ということを認識しないことには、にっちもさっちもいかないことが多いのです。
認知症のケア、治療は、本人の協力なしには出来ないと思います。
症状が進んでいくと、「物が盗られた」「おかしなものが見える(幻視)」などの、「普通では無い状況」がやってくる。
今の今まで、「あなたは忘れっぽい」なんて指摘を一切してこないのに、認知症の度合いが進みごまかし切れずある一線を越えたら、
「あなた認知症ですよー治療しましょうねー」「認知症なんですよー、だから○○してもらいますが仕方ないんですよー」なんて、不意打ちもいいところにしか思えないのです。
納得出来ると思いますか?上手くいくと思いますか?
認知症を指摘した後のフォロー
私は「健忘を指摘」したあと、必ず、ものすごくフォローを入れました。
「お母さん、グッズいっぱいあるから。物忘れしてもいまは大丈夫」
「私がフォローするから」
「ちょ、やっばいって。それ覚えてないといけない事柄だよ? すごく怖いよね。よし。カレンダーを●●っぽくして△の工夫をしてみよっか」
「そっか、そういうところで物忘れがでて困るね。よし、○○を試してみよう」
物忘れを指摘したうえで、「よし、それを何とかしてあげる」とずっとずっと言ってきました。
そのおかげで、現在、母と私の関係はとても良好です。今後どうなるか…はわかりませんが…。
でも、初期段階での対応を間違っていれば、ものすごく憎み合った関係になっていたりするのかなと思うのです。
認知症のことを前もって勉強し、親にその兆候が現れたときに慌てず冷静に対応できるという「初期段階の対応」が大事なのだと思っています。